2024.09.30

逸見光次郎 様

お客様にとってLINEは情報接点。ID連携など求めず「 いかに軽く 」お客様が望む情報をお届けできるか考えるべき

お客様にとってLINEは情報接点。ID連携など求めず「 いかに軽く 」お客様が望む情報をお届けできるか考えるべき

株式会社 Catラボ
代表取締役 逸見光次郎 様

— 本日はどうぞよろしくお願いいたします。まずは逸見さんの業務内容について教えていただけますか

「 三省堂書店の店舗からスタートして、セブンネットショッピングの立ち上げやイオンのネットスーパーなどを立ち上げてきましたが、後半はずっと戦略の仕事をやっていました。今の会社でも『 デジタルで何かやらなきゃいけないけれど、何をしたらいいか分からない 』という相談や『 アプリや EC で何かやりたい 』 という相談をきっかけに、中期経営計画のような経営側の支援までさせていただくことが多いですね 」

— とはいえ全社的な業務フローを書いて、あらゆる部署・業務・システムのボトルネックを洗い出し、その支援範囲としては細部にまで及ぶイメージがあるのですが

「 そうですね。業務はもちろん、どのくらいのシステム投資がいるのかなど、ビジネスとして収益上げていく上で必要なことを一緒に整理していきます。そして最後にきちんと詰めるのが顧客の話ですね 」

— 今日はその顧客の話をしていきたいと思うのですが、逸見さんがおっしゃっている「 情報接点 」と 「 購入接点 」 の話がとても興味深く。詳しく教えていただけますか?

「 買い物の流れを整理すると『 情報接点 』と 『 購入接点 』という2つトリガーが存在すると思います。例えばお店って、商品を見て、説明を聞いて、よければ購入するという、同じ場所に情報の接点も購入の接点もあります。EC もそうですよね。サイト内に情報を充実させて買ってもらうという。ところが今は SNS で情報を得て、購入はお店や EC という具合に分離してきています。情報として見ているときの気持ちと購入するときの気持ちは別だと思うので、この情報接点と購入接点を分けて考える必要があります。

ところがオムニチャネルというと企業にとってのチャネル論になってしまいがちで、会員になってもらいたい、アプリを落としてもらいたい、使い続けてもらいたい、購入してもらいたいという、企業側の都合を押し付けがちです。そうではなくて、お客様にとって情報接点はどこが便利で、購入接点はどこが便利なのか、タイミングに応じた距離感など、ちゃんと考える必要があると思います 」

— 購入接点はお店と EC、情報接点はスマホという部分については誰しも異論ないと思うのですが、スマホの中でもアプリ・LINE・メール、はたまた SNS など、どこに接点を求めるかということですよね

「 そうですね。EC での購入については経産省レポートで半分強がスマホと言われていますが、情報を見ているという観点ではもっと多く、8割〜9割くらいにはなりそうなイメージを持っています。

その中で企業はアプリという導線を確保したいものの利用頻度の低いアプリは、スマホの中に維持されることはありません。じゃあスマホの中で利用頻度が高く利用されているものは SNS だと思うのですがプッシュができない。じゃあ利用頻度が高く、プッシュもできるのは LINE になるので、情報接点において LINE公式アカウントはとても重要だと思います 」

— 購入接点において多くの個人情報を求めるのは、配送に必要なのでお客様もある程度は納得していると思います。一方で情報接点においては、ID 連携のような面倒なことを望む人はいないので、ワズアップ!では ID 連携しないでお客様が望む情報を配信できる仕組みを発明しました

「 そうですよね。ID 連携してまでその企業の情報が欲しいというユーザーのイメージがつきませんよね。それこそ企業都合で 『 いやいや、ID 連携するでしょう 』 って、社内でもまことしやかに言われるけれど、いざ自分がお客さんになったときには LINE で ID 連携しているアカウントなんてほぼないという。

そこまでするならアプリを落とすと思いますし、LINE ってお客様にとっては情報接点なので、もっと軽いところで使われてるって考える方が自然ですよね 」

— それにも関わらず、この「 ID 連携不要論 」は、LINE の業界では王道に反する考え方で、それを提唱している人やツールを見たことがありません

「 確かにないですね。私もワズアップ!を知るまでは、LINE のセグメント配信には ID 連携が必要だと思っていました 」

— ここは特許も取得しましたが、設計を工夫すれば ID 連携せずともセグメント配信はできます。カート落ちも、再入荷も、お気に入り商品の在庫わずか・値下げ、お気に入りブランドの新着配信など、EC で定番となっているような施策はすべて ID 連携なしで実現しています。しかも EC だけでなく店舗もカバーしているという点はワズアップ!だけの強みでして、店舗の再入荷お知らせや在庫わずかも配信可能です

「 LINE に購入接点のような ID 連携を無理に求めるのではなく、お客様にとって LINE は完全に情報接点であるという事実を認識して、ライトな登録でお客様が望む情報をお届けする。そこから購入接点となる店舗や EC に来ていただくというのが自然ですよね 」

— アプリ・メール・LINEで同じような施策が重複してしまうのも、すべてで最上を目指そうとしているからなんでしょうね。全体感の中でそれぞれの特性を加味して個別に役割を持たせれば良いのに、すべてで最上を目指すがために、結果的にどれも同じ内容になってしまうという

「 しかもそれが企業目線における最上を求めているだけで、お客様視点における最上の体験設計になっていないのが問題ですよね 」

— PAL さんでスタートさせていただいた「 店舗 入荷お知らせ 」という新しい機能があります。これは「 ECサイトで気になった商品の店舗在庫を見ることができる 」という体験を「 見るだけでなく、売り切れていたらリクエストして、入荷情報を受け取れる 」という体験にアップデートしました。簡単な登録のみでお客様が希望した情報が届く。これこそが LINE に最適化された活用方法なのではと

「 確かに。今まで PV や離脱率という数値から漠然と推測するしかなかったお客様、とくにライト層のお客様だと思うのですが、そこがリクエスト数という形で可視化されますよね。

今までの体験では、店舗に取り置きをお願いすると買わなきゃいけないプレッシャーが強いので、声をかけないというお客様の方が多かったと思います。一方、EC で再入荷リクエストしても、現物を見て買うことができないという不安がある。この双方のデメリットを解消していますよね。しかも入荷お知らせを受け取るだけのために会員登録や ID 連携なんかしたくないわけで 」

— PV とか離脱率という漠然とした数値でしか推測することができなかった、店舗利用を前提とした EC 閲覧者、つまり EC を情報接点として使っているライト層の声なき声を可視化できるようになったからこそ、一月で億を超えるようなリクエスト金額が入る機能になっています

「 しかもそういうお客様が大多数を占めますからね。リクエストの際に会員登録してください、ID 連携してくださいってなったら離脱してしまい、このような成果にはならないでしょうね。

この店舗入荷お知らせの仕組みって、配信が届いても買わなくてもいいし、なんだったらお店に行かなくてもいい、というお客様の選択の幅が大きいですよね。これが店員さんに取り置きをお願いしてしまうと、半強制的にお店にいかなければならないし、行ったらなんとなく買わないといけないという気持ちにもなる。だからお願いするのに尻込みしてしましますよね。

こういうライトな人に軽く使ってもらうにはアプリやメールに比べて LINE は最適だと思うし、その層に向けた施策って広告とかクーポンくらいしかできていないことが多いので、もっと広く活用されるべきですよね 」

— 「 買わなくてもいい 」 という選択肢を排除していくことがマーケティングなのかもしれないのですが、実はそれって企業目線すぎるのではないかと。SNS を見て「 いいね 」や「 ブックマーク 」するぐらいの簡単さで、リクエストしたことすら忘れてるくらいライトに使える。でも配信でちゃんと思い出すことができるので、その時に心が動けばお店や EC を覗いて、良ければ買うくらいの距離感こそがお客様が企業に求める距離感なのではないかと

「 はい、情報接点においては 『 お客さまにとって いかに軽く 』ですよね 」

— 実生活に置き換えたとき、初対面やあまり話したこともないのに、いきなり住所・名前・フリガナ・電話番号・生年月日・性別などを聞かれて、LINE 交換求められたら普通にキモいですよね (笑)。最適な距離感って「 趣味何ですか?」くらいがライトな距離感だと思うのですが、ワズアップ!はまさにそのイメージで設計しており、趣味の部分を配信希望のブランド・商品・店舗・スタッフなど、クライアントに応じて置き換えている感じです

「 まさにそれが冒頭でお話しした、情報接点と購入接点の切り分けができている状態ですよね。個人情報を取りたいという気持ちは分からなくもないけど、個人情報をとるべき購入接点は他にあるわけで。どんな場面でも個人情報を取らなきゃ売上につながらないというのは、たんなる思い込みだし、短期的売上を求めるあまり、継続して利用してくれるかもしれない顧客を排除してしまう時点でマーケティングですらないですよね。

さっきの PAL さんの例では洋服でしたけど、この機能は EC だけでなく店頭でも簡単にリクエスト登録できるので、スーパーだとアーモンドミルクが品切れするので、アーモンドミルクのコーナーにリクエスト登録できるポップを用意しておけば、LINE で入荷連絡を配信できますよね。スーパーは当然、周辺に住んでいるお客さまの利用が多いので『 今日は売り切れなので登録だけしておいて、通知きたら寄ろうかな 』というライトな感覚で便利使いされると思います。

何回か利用しているうちに、じゃネットスーパーの登録もするか、ということにつながるかもしれない。そのうち、ワズアップ!でリクエストを5回した人はネットスーパーをよく使っている、というような因果関係が生まれてくることもあると思います。

これはスーパーの例えですけど、いろんな業種で使えるのがワズアップ!なんですよね。アパレルやスーパーはもちろん、中古車、物件、人材など、会員登録や ID 連携のような面倒なことをせずとも簡単にリクエストして新着情報や入荷情報を受け取りたいという業界はいっぱいあるはずですよね 」

— はい。この可視化されていないライト層の掘り起こしは、あらゆる業界において最後の金脈なのではないかと思っています。ぜひ「 LINE は ID 連携せずともセグメント配信できる 」ことを認識いただき、LINE の特性に合わせた活用をいただければと思います。

この事実はもっと広くの方に知っていただきたいので、これを読んでいただいた方でセミナーやメディアをお持ちの方がいらっしゃったら、ぜひボクたちを呼んでください (笑)。

逸見さん、今日はありがとうございました!

 



プロフィール

逸見光次郎
株式会社CaTラボ 代表取締役

1970年生まれ。学習院大学文学部史学科卒。94年 三省堂書店入社。 神田本店、成田空港店、相模大野店、八王子店勤務。99年ソフトバンク入社。イーショッピングブックス立ち上げ( 現:セブンネットショッピング )。06年 アマゾンジャパン入社。ブックス マーチャンダイザー。07年イオン入社。ネットスーパー事業立ち上げ後、デジタルビジネス事業戦略担当。11年キタムラ入社。執行役員EC事業部長、のち経営企画室オムニチャネル( 人間力EC )推進担当。17年オムニチャネルコンサルタントとして独立。194月より現職。

現在は、ファナティック社アドバイザーの他、プリズマティクス社アドバイザー、デジタルシフトウェーブ執行役員、流通問題研究協会 特別研究員、EVOCデータ・マーケティング取締役、防音専門ピアリビング取締役、日本オムニチャネル協会理事、FireworkJapanアドバイザー、福岡デザイン&テクノロジー専門学校講師/教育課程編成委員、ギフト研究所 特別顧問、ハックルベリー社アドバイザーを兼務

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