「 黙って帰るお客様 」に声がかけられていますか? 〜非会員CRMが変える、ECの未来〜

「 黙って帰るお客様 」に声がかけられていますか? 〜非会員CRMが変える、ECの未来〜

LINE Frontliner / LINE認定講師 野田大介
野田大介
LINE Frontliner / LINE認定講師
ECサイトには月間何万、何十万というお客様が訪れます。しかし、その 99 %は名前も顔も連絡先も分からないまま、何の声もかけられず帰っていく――。広告費をいくらかけても、SNS でフォロワーを増やしても、この「 見えない大多数 」へのアプローチができていなければ、売上の伸びには限界があります。本記事では、この長年の課題に対する解決策「 非会員CRM 」について、その本質的な考え方から、実際の導入事例、具体的な始め方まで徹底的に解説します
はじめに

1%の購入率が示すもの

「 うちの EC サイトは月間10万人もの訪問者がいるのに、なぜ売上が伸びないのか? 」――こうした悩みを抱える経営者やマーケティング担当者は、決して少なくありません。実は、その答えは「 訪問者数 」ではなく「 訪問者との関係構築の仕方 」にあります。

EC サイトを訪れた顧客のうち、実際に購入に至る人は、わずか 1 %程度。残りの方の多くは会員登録もログインもせず「 情報収集 」を目的にサイトを回遊しています。商品を眺め、価格を確認し、レビューを読み、他社と比較する――そうした活動を通じて、購買判断の材料を集めているのです。しかし企業側には、その 99 %の顧客がどんな人で、何を求めているかが見えておらず、当然、お声がけもできません。名前も顔も、メールアドレスさえも分からない――それが圧倒的多数を占める非会員、そして未ログイン状態の訪問者です。

店舗であれば、店員さんが「 いらっしゃいませ 」と声をかけ、興味を持って商品を見ているお客様には「 お探しのものはありますか? 」と会員でも、非会員でも話しかけます。でも店舗では当たり前のように行われている、そのような接客が、なぜECサイトでは行われていないのでしょうか。

この記事では、非会員 CRM という新しい手法が、なぜ EC サイトにパラダイムシフトをもたらすのかについて、4つの章に分けて解説していきます。さらに 先進企業の具体的な数値も交えながら、その威力を明らかにしていきます。

 

第1章

見えていなかった機会損失 ―「 情報接点 」と「 購入接点 」の混同


ある顧客の見えない旅

想像してください。洋服が大好きな 30 代女性、A さんの行動パターンを。

A さんは SNS を閲覧中、広告として出てきたあるブランドの春物パンツを気に入りました。そしてリンクを踏んで、その商品ページへ。デザインも素敵で、サイズもあります。でも価格が想定より少し高かったので、一旦購入を踏みとどまり「 値下げ情報も届くだろうし、お気に入り登録でもしておこう 」と商品ページのハートマークを押します。

そこに突如出現するのは、いきなりのログインページ。まだ会員登録していない A さんは「 値下げ情報を知りたいだけなのに、なんで個人情報を入力しなきゃいけないの… 」と、そっとそのサイトから離脱していきます。

しかし、EC サイト運営者には「 ページビュー数:○○ 」という、とても大きな数字の中に A さんの行動は隠れてしまい何も見えません。たとえ後日、値下げしても A さんにそれをお知らせすることはできませんし、そうこうしている間に A さんは別のブランドで似た商品を購入してしまうでしょう。

これは決して特殊なケースではなく、毎日、どの EC サイトでも繰り返されている悲劇です。商品ページのお気に入り、再入荷お知らせ、お気に入りブランド――こうしたあらゆる「 軽い接点 」が、ログインの壁によって機会損失に変わっているのです。


従来の CRM が前提としていた「 会員登録 」という高い壁

これまでの CRM 戦略は「 会員登録 」を最初のステップとして設計されてきました。会員になってもらい、情報を蓄積し、個別にアプローチする。従来行われてきたこの手法の問題点は「 会員登録 」という高いハードルを最初のコミュニケーションとしてきたことです。お客様にとって、見知らぬ  EC サイトに個人情報を提供することは、決して気軽な行動ではありません。

私が専門とする LINE を活用した個別配信では、さらに手間が増えます。友だち追加 → 会員登録 → ID 連携という三段階の手続きが必要で、各ステップで離脱者が生まれます。調査によれば、会員登録で半数以上、ID 連携では 4/5 ものお客様が離脱し、最終的に個別配信の対象となるのはサイト訪問者のわずか数 % にすぎません。どれだけ広告費をかけて集客しても、バケツに大きな穴が開いている状態では意味がないのです。


購入接点という視点のみで進化してきたECサイト

ここで最も重要な視点をお伝えします。お客様は、EC サイトを二つの異なる目的で使い分けています。

情報接点
商品を調べたり、トレンドを探索したり、レビューを読んだり、価格を比較する
購入接点
実際に商品を買う意思があるとき

ところが、EC はこれまで「 購入接点 」としてのみ捉えられ、進化を続けてきました。「 お得意様にいかに買っていただくか 」「 カートに入れた商品をいかに購入まで運ぶか  」――そうした視点に最適化されたサイト設計が、当たり前になっています。

しかし、Instagram、TikTok、X など、情報が溢れる現在、お客様は購入決定の前に外部で情報を集めるのが当たり前になっています。店舗で買う際にも EC サイトで調べてから買いに行くことが多いでしょう。

SNS ではフォローボタン1つで必要な情報が受け取れます。Instagram で好きなブランドをフォローするのに、住所もメールアドレスも要求されません。YouTube でチャンネル登録するのも、TikTok でフォローするのも、すべてワンタップです。

そのような環境に周りが変化したにも関わらず、EC サイトだけが必要な情報を受け取りたいと感じたお客様に「 まず会員登録をしてください 」と登録の壁でシャットアウトするような行為を未だに続けています。これは SNS 登場以前の時代の名残であり、明らかに時代とのズレなのではないでしょうか。

第2章

解決策としての非会員CRM ― SNS 感覚でつながる新しい仕組み


「 情報接点 」と「 購入接点 」でコミュニケーションを変えるという発想

非会員 CRM の本質は、以下の通りシンプルです。

お客様が「 情報接点 」として使う行動を、そのまま「 個別配信のデータ 」に変える

具体的には、こういったアクションです。

・EC サイト上でお気に入り登録する
・再入荷お知らせに登録する
・ブランドをフォローする
・お気に入りのスタッフをフォローする
・最寄り店舗を登録する
・イベントのリマインド登録する

従来の仕組みでは、これらのアクション時にログイン画面が表示され、非会員の場合は会員登録が必要でした。非会員 CRM の場合は、それらのボタンをタップして認証に許可するだけ ( =2タップ )、2回目以降は1タップするだけで、即座に LINE によって入荷情報や値下げ、新作やイベント開始といった、お客様が希望した情報を LINE で受け取ることができるようになります。そこに会員登録や ID 連携の必要はありません。

利用者の体験 

従来のCRM
入力の壁で、どんどん離脱
1お気に入りボタンをタップ
2ログイン / 会員登録が必要

画面が立ちはだかる
3名前・住所・メール入力

手間が増える
4やっぱり面倒
そのまま離脱 → 機会損失

非会員CRM
入力ゼロ、最短で配信へ
1お気に入りボタンをタップ
2LINE認証画面をタップ

【初回のみ】タップだけで完了
3そのまま配信開始
離脱ゼロ → CRMに接続

会員登録も情報入力も不要。だから「 黙って帰るお客様 」を逃さない。

これは、SNS でフォローボタンを押す体験とまったく同じです。「 いいね 」感覚でつながれる――だからこそ、お客様にとって心理的ハードルが圧倒的に低いのです。


ワズアップ!が実現した「 いいね 」感覚の個別配信

弊社が提供するワズアップ!は、この非会員 CRM を実現するためのツールです。その最大の特徴は、会員登録も ID  連携も不要で、顧客の欲しい情報を把握して LINE で個別配信できる点にあります。

【 ワズアップ!の仕組み 】

1
情報接点として接続
「 再入荷 」「 お気に入り 」「 ブランド登録 」「 イベント開始 」など、EC サイト上の様々な場所に通知ボタンを設置
2
LINE の友だち登録と同時にセグメント化
お客様が受け取りたい通知ボタンをタップすることで、LINE の友だちになり、同時に配信すべき情報を認識
3
精度の高い個別配信開始
商品入荷や値下げなど、通知ボタンに応じた内容を LINE で個別配信

つまり、従来の CRM とは異なり「 お客様が欲しい情報 」が最初から分かっている状態から始まるのです。これは、購買履歴から推測して配信するパーソナライズという名の押し売りとは、根本的に違うアプローチです。お客様自身が「 これが欲しい 」と意思表示してくださっているのですから、配信内容も配信タイミングも迷う必要がありませんし、成果も当然でます。


実際の配信効果の目安

ワズアップ!の非会員 CRM を実装したクライアントでは、以下のような「 お客様が欲しい情報 」を配信することで高い配信成果が生まれています。

・再入荷お知らせ:購入率 5~10 %
・カート落ちリマインド:購入率 5~7 %
・ブランド別 新着自動配信:購入率 1~2 %
・値下げ・在庫わずか通知:購入率 1~3 %

また非会員 CRM という未開拓領域の可能性に気づき、実際と取り組みを始めているクライアント企業からは、以下のような声もいただいております。

いくら広告や SNS で集客しても「 登録の壁 」というバケツの穴が空いた状態だった。

店舗であれば、会員でも非会員でもお声がけしているのに、EC では一切声もかけず放置して、帰ってしまっていた。

非会員 CRM を知って、戦う土俵を変えなければ、ずっと購入接点として押し売りを続けるところだった。

まだ信頼関係が浅いお客様にとって「 会員登録 」や「 ID連携 」という施策が、将来の優良顧客を入口の時点でシャットアウトしていた。

 

第3章

実例から学ぶ ―毎月数億円の隠れた機会ロスを可視化

理論はここまでで理解いただけたかと思います。ここからは、実際の導入企業がどのような成果を上げているか、具体的な数値とともにご紹介します。


PAL様の事例:毎月数億円単位の機会ロスの可視化

アパレル大手の PAL 様は、非会員 CRM を活用して、以下のような取り組みを実施しています。

1. ECサイトで商品を検索したお客様が「 この商品の店舗在庫を知りたい 」というボタンをタップ
2. 最寄り店舗に在庫がなければ入荷お知らせをタップ
3. 指定した店舗に希望の商品が入荷したとき、自動的に LINE で通知が届く

この仕組みによって、初めて可視化されたのが、毎月数億円規模の潜在需要です。このお客様は EC サイトを「 情報接点 」として使う、店舗が「 購入接点 」のお客様です。今までのECサイトではこのように「 情報接点 」として EC サイトを使う多くのお客様のニーズを可視化することができておらず、アプローチも不可能でした。それがライトに登録可能な非会員 CRM によって、日本で初めて店舗に眠る膨大な機会ロスが可視化されたのです。

入荷リクエスト
月数億円
入荷お知らせ 購入率
2.5倍
友だち増加率
1.9倍


SNIDEL様の事例:LINE経由売上の6割以上を獲得

ファッションブランド SNIDEL様のご担当は「 業務が増えることなく、売上だけが上積みされる感覚 」と表現しています。これが非会員 CRM  が持つ、もう1つの価値です。一斉配信のように人手をかけて毎回コンテンツを準備する必要がなく、自動配信が継続的に売上を生み出してくれる。この構造の違いは、運用コストの観点からも大きな意味を持ちます。

入荷お知らせ ROAS
10,000%
カート落ち ROAS
5,000%
LINE経由売上シェア
65%
導入初年度売上
前年比145%


KOMEHYO様の事例:精度の高いセグメント配信による3.5倍の成長

リユースショップ  KOMEHYO 様は、シャネル、ルイ・ヴィトン、エルメスといったハイブランド品を中心に扱う企業です。リユース業界では「 同じ商品が二度と入荷しない 」という性質上、お客様への入荷情報の即時通知が極めて重要になります。

そこで EC サイトを訪れたお客様が、特定のブランド( 例:シャネル、ルイ・ヴィトンなど )やカテゴリ ( 例:バッグなど ) の検索後、そのページに設置された「 このブランドの新着を受け取る 」というボタンをクリックすれば、その瞬間から、そのブランドの新商品情報だけが LINEで配信される、そんな仕組みです。

購入件数
通常配信の3.5倍
経由売上
LINE売上の50%
経由単価
10万円以上


Cosme Kitchen様の事例:CVR10%に迫るカート落ちリマインド

オーガニックコスメを扱う Cosme Kitchen 様では、特にカート落ちリマインドで驚異的な成果が出ています。CVRは約10%、つまりカート落ちした人の10人に1人が、LINEのリマインドを受けて購入に戻ってきているという計算です。

カート落ち CVR
10%
カート落ち ROAS
5000%
手動配信 CVR
1%アップ
複合リッチメニュー CVR
1%アップ

ROAS 5,000%という数字は、広告費1円が50円の売上を生むという意味です。通常の広告施策では、ROAS 500%もあれば良好な中、この数字は別次元といえます。


4つの事例から見えてくる共通点

PAL 様、SNIDEL 様、KOMEHYO 様、Cosme Kitchen 様。業態も商品も異なる4社の事例に共通するのは、以下の3点です。

見えていなかったニーズの可視化
非会員というブラックボックスに眠っていた潜在需要が、データとして見えるようになった

運用負荷の低減
一度設定すれば自動配信が続くため、追加の人手をかけずに売上が上積みされる

顧客満足度の向上
お客様自身が「 欲しい 」と意思表示した情報だけが届くため、押し売り感がなく信頼関係が築かれる

つまり非会員CRMを実現するワズアップ!は、単なる「 配信ツール 」ではなく、潜在需要を発見するセンサーであり、お客様との新しい関係を築くプラットフォームなのです。

第4章

今すぐ始める非会員CRM ―実装のステップと心構え


「 CRM は非会員から始まる 」という発想の転換

これまでの CRM 戦略は「 会員化 」を目指すものでした。非会員CRMが提唱するのは、この順序を以下のように少し変えることです。

非会員情報接点でつながる 信頼関係構築会員登録購入へ

つまり「 購入の前に、軽くつながる 」ことが出発点なのです。興味ある内容を共有して仲良くなる。これは人間関係においても自然なアプローチです。初対面の人にいきなり名前と住所を聞かないのと同じで、お客様にも段階を踏んだ関係構築が必要です。


1〜2タップでの「 いいね 」感覚で繋がることの重要性

冒頭のAさんの場合で考えてみましょう。Aさんは「 春物パンツの購入検討 」という状態でした。

・ECサイトの商品ページで購入を迷い、とりあえずお気に入り登録ボタンをタップ
・LINEの友だち追加と同時に、その商品のお気に入り登録が完了
・値下げや在庫わずか、コーディネート情報が LINEで届く

この流れで大切なのは「 LINEの友だち追加 」と「 欲しい情報の特定 」が同時に行われる点です。

なぜなら、単に「 友だち追加 」しただけでは何を配信して良いか分からないからです。そんな状態でやみくもに LINE 配信を続けても、配信の無駄打ちが積み重なり、余分な配信費用とブロック率が上がるだけ。仮に購買履歴などを参考に配信したとしても、それも推測のもとに成り立つ「 押し売り 」です。お客様が自ら希望した内容に勝る情報はありません。ここに、非会員 CRM の真髄があります。「 友だち追加と意図の取得を同時に行う 」、この1ステップに技術とアイデアが凝縮され、特許も取得した独自の技術となっているのです。


まずは「 1機能から 」段階的な導入

非会員 CRM を導入するとなると、大規模なシステム改修を想像する人が多いかもしれません。しかし、ワズアップ!の場合、1機能から段階的にスタート可能です。必要な開発は「 タグの設置 」と「 商品マスタの連携 」のみ。 競合他社が非会員 CRM を導入した時点で、あなたのブランドとの『 体験差 』が広がります。

この差は、顧客満足度、リピート率、ブランド認知度のあらゆる面に影響します。「 顧客体験 」こそ、ブランド価値そのものです。必要な情報をお届けする、そんな信頼関係を築く前から会員登録という登録の壁を最初にもってくる。そんなハードルを残したままでは、これからの時代、後塵を拝することになるでしょう。

まとめ

非会員 CRM の本質

非会員 CRM は、単なる「 新しいマーケティング手法 」ではありません。お客様とのコミュニケーションのあり方そのものを再定義する取り組みです。核となるのは、以下の4つの視点です。

情報接点と購入接点の分離
お客様の行動シーンに合わせたアプローチ
「 いいね 」感覚の手軽さ
SNS 時代に自然な登録体験
精度の高いセグメント化
お客様が欲しい情報だけを配信
信頼関係の自然な構築
押し売りではなく、ニーズ起点のコミュニケーション

これらが実現したときに始めて、情報接点として EC サイトを利用する 99 %の訪問者が、顧客へと変わっていきます。

毎月数百万、数千万、あるいは数億円規模の潜在需要が可視化され、売上に変わっています。これは、PAL 様、SNIDEL 様、KOMEHYO 様、Cosme Kitchen 様といった先進企業がすでに実証している事実です。

最後に

今が行動のとき

「 非会員にもCRMできるようになった 」という認識が、業界で急速に広がっています。

黙って帰ってしまっていた大多数のお客様が存在することに気づいた企業から、一気に導入を進めています。「 広告で集客できているのに売上が伸び悩む 」「 LINEを運用しているが成果が出ない 」と感じているなら、原因はその前段階にある非会員へのアプローチ不足かもしれません。この波に乗り遅れると、競合との格差は取り戻しが難しくなっていきます。

黙って帰っていたお客様に、今日から声をかけてください。
あなたのブランドを好きになりかけていた 99 %のお客様が、お声がけを待っています。

プロフィール

野田大介
LINE Frontliner / LINE認定講師
ファッション誌の編集、スニーカーブランドの生産管理、アパレルブランドでの通販責任者を経て、2016年に株式会社ファナティック設立。大手アパレル通販のリニューアル支援や売上改善の傍ら、2017年にLINE公式アカウントの自動配信ツール「ワズアップ!」を提供開始。2020年には日本で6人だけのLINEの認定講師 LINE Frontlinerに任命( 2024年現在9名 )。2021年には動画接客ツール「ザッピング」の提供を開始。他にも'90年代のストリートファッションを《あんとき》のストリートと定義して振り返るウェブメディア「ミミック」も運営している

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