LINE 公式アカウントを運用している EC 担当者の悩みは、だいたい同じところに行き着きます。「 全員に同じメッセージを送るしかない。通数課金だからコストは増える。でも反応率は上がらない 」。
その解決策として語られるのが「 セグメント配信 」です。ただ、この言葉は意味が広く、LINE 公式アカウントの標準機能で済む話から、ID 連携を伴う MA ツール、行動ベースの自動配信まで、まったく違う手法が同じ名前で呼ばれています。
この記事では、LINE のセグメント配信を「 何を軸に分けるか 」「 どの方法で実現するか 」「 いくらかかるか 」「 どれだけ成果が変わるか 」の順に整理します。数字はすべて、私たちが支援してきた導入企業の実績です( 社名は伏せ、業種で表記しています )。
セグメント配信とは、友だち全員ではなく、条件に合う一部の友だちにだけメッセージを送ることです。「 セグメント( 区分 ) 」の軸には、大きく3種類があります。
属性:性別・年齢・地域・OS・友だち期間など
会員データ:購買履歴( ID 連携が必要 )
行動・意思表示:どの商品を見たか、カートに入れたか、どのブランドをフォローしたか、何の再入荷を待っているか
EC の売上に直結するのは3つ目です。「 30代女性 」に送るより、「 この商品の再入荷を待っている人 」に送る方が、圧倒的に買われる。当たり前ですが、多くの企業は1つ目で止まっているか、2つ目で足踏みしています。
追加費用なしで使えますが、絞り込めるのは性別・年齢・地域・OS などの「 みなし属性 」( LINE が推定した属性 )と、友だち期間、オーディエンス( クリックした人・開封した人など )に限られます。「 何が欲しいか 」は分からないため、EC での成果には限界があります。
管理画面での正式な名前は「 絞り込み配信 」です。「 セグメント配信 」は業界での呼び方で、LINE 公式アカウント( LINE Official Account Manager )ではメッセージ作成画面の「 配信先 」で [ 絞り込み ] を選び、属性かオーディエンスを指定します。
使うには条件があります。属性で絞り込むにはターゲットリーチ数が 100 人以上必要で、絞り込んだあとの推計対象ユーザーが 50 人以上でなければ配信できません。属性は LINE の利用動向から推定した「 みなし属性 」で、概ね 3 日前の情報が使われます( いずれも LINE ヤフー社のマニュアルに記載 )。友だちが少ないうちは属性での絞り込み自体が使えないため、まず友だちを増やすか、オーディエンス( 配信をクリック・開封した人 )で代替することになります。
LINE の友だちと EC の会員 ID を紐づけ、購買履歴などで配信対象を絞る方法です。細かな CRM が組める反面、お客様に ID 連携の操作をしてもらう必要があり、連携率が母数の上限になります。ツール費用に加えて EC 側の開発費もかかります( 詳しくは LINE ID 連携とは? の記事で解説しています )。
EC サイト上の「 再入荷お知らせ 」「 お気に入り 」「 ブランドをフォロー 」「 カートに入れる 」といった行動を、そのまま配信の条件にする方法です。お客様はボタンを押すだけ( 初回は LINE 認証の許可を含めて2タップ )で、会員登録も ID 連携も不要。お客様の動作からワンタップ型とも呼んでいます。私たちはこの仕組みを「 非会員 CRM 」と呼び、特許を取得しています。会員でない訪問者――EC では大多数です――にも届く点が、①②との決定的な違いです。
ID 連携型は「 誰に何を送るか 」の精度は高いものの、届く相手が ID 連携をやり切った会員だけに絞られ、分母が狭くなりすぎます。EC の訪問者の大半は非会員で、会員であっても LINE と連携している人はごく一部です。どれだけ精度の高いセグメントを組んでも、母数が訪問者の 0.05% 程度では売上のインパクトは出ません。
だからこそ、会員登録も ID 連携も求めずに「 何が欲しいか 」だけを登録してもらう非会員 CRM が必要になります。「 欲しい情報で絞る精度 」と「 非会員を含む広い分母 」を同時に満たせる方法は、現時点ではワズアップ!の方式だけです( 特許第 7550480 号ほか )。
| ①標準機能 | ②ID 連携型 | ③ワンタップ型( 行動ベース/非会員 CRM ) | |
|---|---|---|---|
| 絞り込みの軸 | みなし属性・友だち期間 | 購買履歴 | 再入荷・お気に入り・ブランド・カート・閲覧 |
| お客様の手間 | なし | 会員登録+ID 連携 | ボタンを押すだけ( 2タップ ) |
| 非会員に届くか | 届くが出し分け不可 | 届かない | 届く |
| EC 側の開発 | 不要 | 必要( 連携画面・DB ) | タグ埋め込みのみ |
| 向いている企業 | まず無料で始めたい | 友だち数十万・会員比率が高い | EC 全般 |
LINE 公式アカウントは従量課金です。友だち全員に月4回送れば、友だち数×4通が課金対象になります。セグメント配信の費用対効果を考えるときは、ツール費用だけでなく「 配信通数がどれだけ減るか 」を含めて見る必要があります。
コスメ企業様:全体配信を月2回、各セグメントへの配信を月4回に切り替えた結果、同じ内容を全体配信した場合と比べて配信数を約65%に抑制。ツール費用は初期10万円・月額3万円でした。
アパレル企業様:登録ブランドのランキング商品を1通にまとめて自動配信し、ブランドごとに個別配信する場合に比べて通数と運用工数を節約。
アパレル企業様:料金改定前に配信頻度を上げてアクティブな友だち( 約5万人中2.5万人 )を見極め、改定後はファン度の高い層に絞って費用を抑えつつ効果を維持。
もう一つ見落とされがちなのが、「 リプライ 」は通数課金の対象外という点です。商品検索・コーディネート検索・店舗検索のように、お客様の操作に応答する形のメッセージは配信通数に含まれません。商業施設様やアパレル企業様では、LINE 上で商品を検索してそのまま購入するケースが増えています。
新着やランキングをブランドごとに別々の配信にしない。通数が跳ね上がります。お客様が登録した複数ブランドの新着は1通にまとめて配信するのが基本です( アパレル企業様の運用 )。
目安として、週2回の全体配信をしている企業には「 全体配信を週1回に減らし、残りをリマインド系の自動配信に充てる 」ことを勧めています。友だち1.5万人×週2回=月10万通超という配信費用が、興味のある人にだけ届く数千〜数万通に置き換わります。
新着配信の画像の下に入れる文字は、アイテム名よりブランド名の方が成果が出ます( 複数パターンを検証済み )。お客様はブランドで見ていて、何のアイテムかは画像で分かるからです。
一斉配信からセグメント配信に切り替えた企業の、配信当たりの成果です。
リユース企業様:お客様が登録したブランド×アイテムに合う新入荷だけを配信。ランダム配信と比べてコンバージョン数が約3.5倍以上。客単価は10万円超。
商業施設様:週1回の全体配信では CVR 1%未満。好みのブランド別の新着配信は全体配信比で CVR 1.6倍、コンバージョン数3倍以上。
アパレル企業様:LINE 通常配信の CVR 約2%に対し、ワズアップ!経由の配信は約5%。
コスメ企業様:LINE 管理画面からの配信では2%未満だった CVR が、セグメント配信では3%超。
紅茶専門店様:LP のようなリッチな配信に変え、LINE 経由 CVR が導入前比160〜170%。
数字の差は「 送り先を絞った 」ことだけで生まれているのではありません。ランディングページがお客様ごとに最適化される――再入荷を待っていた商品ページ、フォローしているブランドの新作一覧に直接着地する――ことが、CVR を押し上げています。一斉配信の着地先がトップページやセール LP に偏りがちなのと対照的です。
セグメント配信を「 毎回手で作る 」前提にすると、運用工数が上限になります。再入荷・カゴ落ち・新着・ランキング・値下げのような定型の配信は初期設定だけで完全自動にし、担当者の手は季節企画やキャンペーンの差し込みに使う。アパレル企業様では自動配信が LINE 配信数の20%にすぎないのに、LINE 経由売上の65%を生んでいます。
LINE 管理画面のカードタイプメッセージは、画像のリサイズやカードごとの登録に手間がかかり、1通に載せられる情報も限られます。品番を入力するだけで商品画像・名前・価格・URL が文面に入り、メイン画像・商品・CTA を1つの吹き出しにまとめられる仕組みなら、LP のような配信を短時間で作れます。紅茶専門店様・アパレル企業様の CVR 改善はこの型です。
セグメント配信は登録者にしか届きません。コスメ企業様は未登録のお客様に絞った配信で登録を促し、配信者数の10%が新たにセグメント登録しました。母数を育てる配信を、最初から設計に入れておくことが重要です。
手動配信の出し分けは、LINE で案内するリンク URL にタグを付与し、そのリンクを踏んだ人( クリック履歴 )を条件にするのが基本運用です。「 セール記事を読んだ人だけに続報 」のような配信が、ID 連携なしで組めます。
閲覧商品リマインドの閲覧回数の条件は2〜3回から始めて、配信数を見ながら絞る。最初は間口を広げて、徐々に絞り込む方が失敗しません。
効果測定は、ワズアップ!の管理画面で配信通数を、売上・CVR は GA4( wazzup のパラメータで絞り込み )で見ます。ツール独自の分析画面を持たないのは「 数字の定義がツールごとに違う 」問題を避けるためです( コスメ企業様が評価してくださった点です )。
LINE のセグメント配信は、属性・会員データ・行動の3軸。EC で成果が出るのは「 行動・意思表示 」で分ける方法。
標準機能は無料だが出し分けが粗い。ID 連携型は細かいが連携率が上限。行動ベース( 非会員 CRM )は会員登録も ID 連携も不要で、非会員にも届く。
費用はツール代だけでなく通数削減で見る。コスメ企業様は配信数を約65%に。リプライ系の機能は通数課金の対象外。
一斉配信比で CVR 1.6〜2.5倍、コンバージョン数3〜3.5倍の実績。自動配信を主役に据えると運用が回る。
できますが、絞り込めるのは性別・年齢・地域など LINE が推定した「 みなし属性 」と友だち期間、オーディエンス( クリックした人など )に限られます。「 何が欲しいか 」で分けられないため、EC での成果には限界があります。
下がります。コスメ企業様は全体配信を月2回・セグメント配信を月4回にして、同内容を全体配信した場合と比べ配信数を約65%に抑制しました。商品検索などの「 リプライ 」機能は通数課金の対象外です。
リユース企業様はセグメント配信がランダム配信の約3.5倍のコンバージョン数、商業施設はブランド別新着で CVR 1.6倍・コンバージョン数3倍以上、アパレル企業様は通常配信 CVR 約2%に対して約5%になりました。