LINE CRM ツールの選び方|3 方式の違いと、EC で成果が出る条件

LINE CRM ツールの選び方|3 方式の違いと、EC で成果が出る条件

野田 大介

この記事は、2020年に日本で6人しかいない初代 LINE Frontliner( LINE認定講師 )に選ばれた野田大介が執筆しています。

LINE 社発行の唯一の公式ビジネス活用ガイド本でもコラムを執筆し、非会員向け LINE 配信の特許を保有。EC 数百社の LINE 活用を支援してきた立場から、実測値を踏まえて解説します。執筆者プロフィール →

LINE CRM ツールの比較表はどれも似ています。ところが同じ「 セグメント配信ができます 」でも、その配信が実際に何人に届くかはツールによって 100 倍以上違います。機能ではなく「 お客様の欲しいをどう知るか 」という方式の違いで 3 つに分類し、自社がどれを選ぶべきかを判断する手順をまとめました。

はじめに

機能比較表を横に並べても、選べない

LINE CRM ツールの検討を始めると、まず機能の比較表を作ることになります。セグメント配信、ステップ配信、リッチメニュー、カゴ落ちリマインド、分析画面——どのツールの資料にも同じ言葉が並び、どれも「 できます 」と書いてあります。

ところが、同じ「 セグメント配信ができます 」でも、その配信が何人に届くのかは、ツールによって 100 倍以上違います。機能の有無を比べても差が出ないのは、比べるべき軸が機能ではないからです。

2020年に初代 LINE Frontliner( LINE認定講師 )に選ばれ、数百社の相談を受けてきた立場から、この記事では「 お客様の”欲しい”をどうやって知るか 」という方式の違いで LINE CRM ツールを 3 つに分類し、自社がどれを選ぶべきかを判断する手順をまとめます。製品名の優劣ではなく、構造の違いの話です。

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LINE CRM ツールは 3 つの方式に分かれる

どのツールも、配信を出し分けるために「 このお客様は何を欲しがっているか 」を知る必要があります。その知り方が 3 通りあり、これがツールの性格をほぼ決めています。

① アンケート型( 答えてもらって知る )

友だち追加のあとに、トーク上でアンケートや質問に答えてもらい、その回答でタグを付けて配信を出し分ける方式です。流入経路ごとにタグを分ける機能を備えたものもあります。EC サイト側の改修が不要で始めやすい反面、答えてくれた人のぶんしかデータが集まりません。またそもそもの分母が LINE の友だち数に限定されてしまう点が大きな特徴になります

② ID 連携型( 会員データと繋いで知る )

LINE の友だちと EC の会員 ID を、お客様本人の操作で紐づけ、購買履歴をもとに配信する方式です。会員データをそのまま使えるので細かい CRM が組める一方、届く相手は「 会員登録を済ませ、さらに ID 連携までやり切った人 」だけ。EC サイト側にも連携画面や DB 改修が必要で、ツール費用とは別に開発費がかかります。

③ ワンタップ型( ボタンひとつで受け取る )――行動ベース/非会員 CRM

EC サイト上の「 再入荷お知らせ 」「 お気に入り 」「 ブランドをフォロー 」「 カートに入れる 」といった行動を、そのまま配信の条件にする方式です。お客様はボタンを押すだけで、その瞬間に LINE の友だち追加と「 何の情報が欲しいか 」の登録が同時に完了します。会員登録も ID 連携も不要なので、非会員を含むサイト訪問者全体が配信対象になります。

この方式は「 行動ベース 」「 非会員 CRM 」とも呼ばれます( 弊社のコラムでもこれまでこの呼び方をしてきました )。本記事では、お客様の動作に着目してワンタップ型と呼びます。SNS で「 いいね 」やフォローを押すのと同じ感覚で登録できる、というのがこの方式の本質だからです。

3 方式の比較
① アンケート型 ② ID 連携型 ③ ワンタップ型
お客様がすること 質問に答える 会員登録・ログイン + 連携を許可 ボタンを 1 回押す
お客様の負担 中 大 小
出し分け アンケートの回答・流入経路 購買履歴 + 行動履歴 行動履歴
届く相手 回答した友だち ID 連携した会員 非会員を含むサイト訪問者
EC 側の開発 不要 必要( 連携画面・DB ) タグの埋め込みのみ
配信通数 一斉配信が中心なら減らない 減らせるが母数が小さい 減らしながら母数を広げられる
向いている企業 まず手軽に始めたい、実店舗中心 会員比率が高く、開発体制がある EC 全般
※ 実際の製品は複数の方式を併せ持つことがある。重要なのは「 主にどの方式でセグメントを作るか 」。

02

比較表では見えない 4 つの落とし穴

落とし穴 ① 「 セグメント配信できます 」の分母が違う

同じ機能名でも、届く人数がまるで違います。ID 連携型の場合、LINE 友だちになるのは EC 訪問者の 0.5% 以下、そこから会員登録で 50% 以上、ID 連携でさらに 80% 以上が離脱し、個別配信の対象は訪問者の 0.05% 程度( 2,000 人に 1 人 )にとどまります。

資料に載っている「 CVR ◯% 」は、この小さな母集団の中での数字であることが少なくありません。率ではなく、実際に何人に届くのかを必ず確認してください。( 詳しくは LINE ID 連携とは?連携率の壁の越え方 )

落とし穴 ② カゴ落ちは「 ログイン状態 」でないと検知できない方式がある

ID 連携型のカゴ落ちリマインドは、お客様がその瞬間に EC サイトへログインしていないと、誰のカートかを判別できません。ID 連携済みの会員であっても、ログアウト状態でカートに入れて離脱すれば配信は送れません。スマートフォンで別のブラウザから開いた、ログインが切れていた、ログイン前にカートに入れた——こうしたケースはすべて対象外になります。見落とされがちですが、実際に配信できる件数を大きく左右します。多くのお客様はカートに入れる → ログインする → 住所・決済方法の選択と進むので、一番ボリュームが多いカートに入れた段階では配信の対象にならないことが多々あります。

落とし穴 ③ ツール費用とは別に、配信通数の費用が乗る

LINE 公式アカウントの配信費用は、ツール費用とは別にかかります。2026 年 10 月 1 日の料金改定で追加メッセージは「 20 万通まで 1 通 3.0 円・超過分 2.5 円 」の 2 段階になり、配信量が増えるほど単価が下がる仕組みは無くなりました。一斉配信を前提にしたツールを選ぶと、友だちが増えるほど費用が比例して膨らみます。( 詳しくは 2026 年 10 月の料金改定と対策 )

落とし穴 ④ 「 できる 」と「 運用が回る 」は違う

セグメント配信を毎回手作業で作る前提だと、運用工数が上限になります。担当者が 1 人なら、月に作れる配信は数本が限界です。再入荷・カゴ落ち・新着・値下げのような定型の配信を初期設定だけで完全自動にできるか、そして配信条件を自分たちで変更できるかを確認してください。条件変更のたびに支援会社への依頼が必要だと、改善が止まります。

03

選び方――4 つの質問で決まる

どの方式が適しているかは、次の 4 つに答えると絞り込めます。

選定フロー
Q1. 届けたい相手は、会員だけですか? 訪問者全体ですか?
訪問者全体なら ③ ワンタップ型。EC の訪問者の大多数は非会員なので、①② では最初から届きません。
Q2. 会員の LINE ID 連携率を把握していますか?
答えられない場合、② を選ぶのは危険です。連携率がそのまま配信の上限になります。まず現状の連携数を数えてください。
Q3. EC サイト側の開発リソースはありますか?
② は連携画面と DB 改修が必要で、ツール費用に加えて EC 側の開発費がかかります。③ はタグの埋め込みで済みます。
Q4. 配信は自動化したいですか? 都度作りたいですか?
担当者が少ないなら、定型配信を完全自動にできる方式を。手動配信中心のツールは、運用が始まってから工数で詰まります。
※ 実際には併用も可能です。ID 連携済みの会員には ② のツール、未連携の人と非会員には ③ を使い、重複を除外して配信している企業もあります

04

導入事例――方式を変えると、数字がどう変わるか

ワンタップ型に切り替えた弊社クライアントの実績です。

コスメ企業様:ID 連携型は初期費用だけで数百万円規模の見積もりだったのに対し、ワンタップ型は初期 10 万円・月額 5万円から開始。カゴ落ちリマインドの CVR は 11%。全体配信を月 2 回に減らして希望配信を月 4 回に増やし、配信数は約 65% に抑制。

商業施設様:週 1 回の全体配信では CVR 1% 未満。好みのブランド別の新着配信に変えたところ、全体配信比で CVR 1.6 倍・コンバージョン数 3 倍以上。

リユース企業様:登録されたブランド × アイテムに合う新入荷だけを配信し、ランダム配信と比べてコンバージョン数が約 3.5 倍以上。

アパレル企業様:LINE 通常配信の CVR 約 2% に対し、希望配信は約 5%。再入荷ボタン経由で 1 日 20〜40 人のペースで友だちが増え続けています。

数字の差は「 送り先を絞った 」ことだけで生まれているのではありません。お客様が待っていた商品のページに直接着地するため、配信を開いてから購入までが短くなります。

方式別・業種別の詳細は 導入事例一覧、機能ごとの事例は セグメント配信/カゴ落ちリマインド/再入荷通知 をご覧ください。

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発注前に必ず聞く 10 項目

提案を受けるときに、このまま質問してください。答えが曖昧な項目があれば、そこが導入後の課題になります。

チェックリスト
1. 会員登録していないお客様にも、個別の配信は届きますか?
2. 弊社の場合、実際に配信できるのは何人になりますか?( 率ではなく人数で )
3. ログアウト状態でカートに入れて離脱したお客様も検知できますか?
4. 導入に EC サイト側の開発は必要ですか? 期間と費用はどのくらいですか?
5. 配信の条件は、私たちだけで変更できますか? 依頼が必要ですか?
6. 定型の配信( 再入荷・カゴ落ち・新着 )は完全に自動化できますか?
7. 導入後、月間の配信通数はどう変わりますか? 通数課金は別途かかりますか?
8. 複数のブランドやカテゴリの情報は、1 通にまとめて配信できますか?
9. 成果はどの指標で確認できますか? GA4 で自社でも検証できますか?
10. 同業種・同規模の導入事例と、その数字を見せてもらえますか?
ワズアップ!の現場 Tips|選定でつまずく企業に共通すること

機能の数で選ばない。使わない機能が多いツールほど管理画面が複雑になり、運用が止まります。導入初年度に実際に動かすのは 2〜3 機能です。まず主力の 1 機能で成果を出してから広げるほうが、社内の合意も取りやすくなります。

「 連携率は上げられます 」という説明を鵜呑みにしない。クーポンなどのインセンティブで一時的に連携率は上がりますが、費用をかけ続けないと止まります。連携率が構造的に上限になる方式かどうかを先に見てください。またインセンティブで獲得した友だちや連携者は成果が出づらく通数課金の足枷となるのでご注意ください。

ツール独自の分析画面に依存しない。配信通数はツールの管理画面で、売上・CVR は GA4 で見るのが確実です。ツールごとに数字の定義が違うと、比較も検証もできなくなります。

併用を前提に考える。すでに ID 連携型を導入している場合、捨てる必要はありません。ID 連携済みの会員はそちらに任せ、未連携の人と非会員をワンタップ型で拾う——この分担が、いちばん早く成果が出ます( 実際に併用しているクライアントがあります )。

まとめ

比べるべきは機能ではなく、届く人数

LINE CRM ツールは、お客様の”欲しい”をどう知るかで ① アンケート型 ② ID 連携型 ③ ワンタップ型 の 3 方式に分かれます。

機能表はどれも似ていますが、届く相手の範囲は 100 倍以上違います。選定では「 何ができるか 」ではなく「 自社の場合、実際に何人に届くか 」を人数で確認してください。

10 月の料金改定で、一斉配信を前提にした運用は構造的に割に合わなくなりました。通数を減らしながら届く人数を増やせるか——これが、これからの LINE CRM ツール選定の基準になります。

関連:LINE ID 連携とは?連携率の壁の越え方/LINE セグメント配信とは?3 つの方法・費用・成果比較/カゴ落ちとは?平均カゴ落ち率と対策 7 選/2026 年 10 月の料金改定と対策

この事例についてよくある質問

LINE CRM ツールはどう比較すればいいですか?

機能の有無ではなく「 お客様の欲しいをどう知るか 」という方式で比較してください。アンケート型・ID 連携型・ワンタップ型の 3 つがあり、同じ「 セグメント配信できます 」でも届く人数が 100 倍以上違います。提案を受けるときは、率ではなく「 自社の場合、実際に何人に届くか 」を人数で確認するのが確実です。

ID 連携型のツールを選ぶ前に確認すべきことは?

自社の会員のうち何人が LINE ID 連携を済ませているかです。連携率がそのまま配信できる人数の上限になります。加えて、ログアウト状態でカートに入れて離脱したお客様は検知できないため、カゴ落ちリマインドの実配信数は想定より少なくなります。EC サイト側の連携画面・DB 改修の費用と期間も、ツール費用とは別に確認してください。

すでに ID 連携型を導入していますが、乗り換えが必要ですか?

必要ありません。ID 連携済みの会員には既存ツール、未連携の人と非会員にはワンタップ型、と分担して併用している企業があります。重複を除外して配信すれば通数も無駄になりません。導入済みの投資を捨てずに、届く人数だけを広げられます。